山崎直・尚子さん

自分達が求めていたものがこの島にはあった

直:
こちらに来る前は、横浜や鎌倉の飲食店で働いていたんですが、年々町が賑やかになりすぎちゃったのが、自分が求める暮らしのイメージとだんだん合わなくなってきて‥もう少し穏やかな環境で生活をしたいとは、結構前から思ってましたね。

尚子:
私もずっと、都市部の飲食店に勤めていました。お菓子を作るのが元々趣味だったので、勤めながら個人でお菓子の販売も少しずつ始めていたんです。

直:
神奈川にいたときから、一緒にお店をやりたいというのはずっと思っていて。ただ、街中での商売は時間やお金に縛られるような気がしてて、ちょっと違うだよなぁとも感じてたんです。

尚子:
そうそう。もっと自分たちのペースで、リラックスして出来る環境でした方がいいよね、とは話していました。そういう具体的な話をし始めてから、だんだんと行き先というか、お店がやれるところというかを探し始めたんです。

直:
「どこか、地方に移住しよう!」と決めてから、まず小豆島以外の地方を見に行きましたが、あんまりピンとこなくて。

尚子:
で、小豆島に来てみたら、印象がすごく良かったんです。なんかうまく言葉では言えないんですが、フィーリングが合ったというか。

直:
そうだね。小豆島は離島なのに色々揃ってて便利だけど、たくさん自然も残っていてバランスが良かった。それから、具体的な「家」を探してみようということになって、町の空き家バンクを見ていたところ、今の物件と出会ったんです。

暮らしに密接したお店づくり

直:
家はそんな感じですんなり決まりました。
引っ越した当時は、自宅でお店をやるイメージはなくて、とりあえず島に馴染む意味でも仕事は何かしないとと思って。ちょうどその頃、オリーブの収穫の時期っていうのもあって地元の方に紹介してもらい、収穫バイトをしました。収穫シーズンが終わった後は、木の伐採の仕事を見つけて間伐作業をやったりしてましたね。ご縁で仕事にも巡り合うことができて、そういうところからも島の良さを改めて感じていました。

尚子:
島に来てから少し経って生活にも慣れたぐらいに「お店どうしようか」と話していて、どういうお店がいいかということも二人で話し合うようになって、お店のイメージもだんだん湧いてきたんだよね。そして、”店を家の外の空間でやったら面白いんじゃないか”っていうアイデアが浮かび、ボヤけていたピントが合った感じでしたね。そうすれば、この山の中の立地も活かせるし木を切る仕事も役に立つし。
そうしていろいろ決まった後は、お店の準備も本格的に進めたりと、急に忙しくなりましたね。

直:
とりあえず早く始めたかったので、小さなスペースができた時点で2018年7月にオープンしました。今もお店を少しずつ手を加えながら営業しています。お客さんの割合は7割が島の方、3割が観光客って感じかな。色々な方が来てくれています。特に島の人が口コミで来てくれるのは嬉しいですね。大した宣伝もしていないのに(笑)。

尚子:
確かに色んな方が来てくれるよね。面白いですよ。

島に無いものは自分達で作っていけばいい

尚子:
街中で生活している時は、消費がメインでした。そういうことも変えていきたくて。お店も、自分たちの手の届く範囲で心地よく仕事をしているっていう実感はあって、そういう身の丈というか、あまり背伸びしすぎないで、周りのものや環境と有機的に関わりながらリラックスした暮らしを充実させていきたいですね。
これからは少しでも食べるものは自分たちで作っていけたらいいなぁ、と。せっかくこういう環境にいるので、風土を活かした暮らし方も今年からは実践していきたいと思っています。

直:
島の環境で不便なところもあるけどそれが逆にいいっていうか、無いものは自分たちで作っていけばいいじゃないですか。都会だと全部揃っているからね。そういうのを作る楽しみがあるのはいいっすよね。

尚子:
この店もそうだけど、ものを生み出せる環境があるのは有り難いよね。あと、こんな山の中だけど、観光の方がわざわざ歩いて来てくれるのも有り難い。息切らしながら(笑)。

直:
探して来てくれる人多いよね。
店を始めてみて、最初は正直どうなるかと思ってました。最低限食べれればいいやと思ってたし、自分が仕事すればまぁなんとかなるでしょ、って。ただ、今はお店も忙しくなって、こんな島の端っこでもちゃんと想いがあってお店をやっていれば訪れてくれる人はいるんだと感じています。
これからも、自分たちのペースで楽しみながら色々やっていきたいと思っています。

(2020年3月9日インタビュー)

プロフィール
山崎直(やまさき ただし)、尚子(なおこ)
1981年神奈川県生まれ、2017年に神奈川葉山から移住。
2018年に小豆島町坂手地区の住居前に夫婦でカフェ「moksha coffee stand」をオープン。

moksha coffee stand

営業日:冬季は土日のみ
AM11:00~PM17:00
https://moksha-coffee-stand.business.site/

Instagram
https://www.instagram.com/moksha_coffeestand/

インタビュー取材・文担当。小豆島出身、進学のため島を離れ、大学卒業後東京で約10年アパレル関係会社で勤務。2017年に小豆島へUターン。現在はpizza kamosでの店舗プロデュースをメインにプランナーとして活動中。

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