新屋 貴之さん

僕のルーツはここにある

僕はずっと大阪で育ってきて、就職も大阪でした。移住を考えたのは、別に仕事や都会の生活が嫌だったわけではないですね。40歳くらいをターニングポイントに漠然と今後の人生の事を考えていた時、豊島の地域おこし協力隊の募集があったんです。
豊島は、元々母親の出身地で祖母もいたので、小さい頃から良く来ていてました。両親も定年後に豊島に引っ越した事もあり、定期的に僕たちも大阪から通うようになって、島に対する愛着もあったんですよね。いずれは、島の為に何かしたいなという使命感みたいなものがずっとあったんです。自分も両親と同じ様に、定年後でもいいかなと思っていたんですが、その年齢からだと自分自身もできる事が少なくなるでしょうし、何よりも豊島自体が手遅れになる可能性もあるなと。
それだったら、残りの人生を自分のルーツでもある豊島で面白いことをやりたいなと思ったんです。その情熱で最終的に決断しました。

棚田=米、だけじゃないチャレンジ

今は土庄町の地域おこし協力隊として、豊島の農業振興の仕事をしています。唐櫃(からと)地区にある‥というよりかは豊島美術館の前のと言った方がわかりやすいですが、そこにある棚田を農作地として再生・復元させる棚田プロジェクトの業務がメインです。地元の人や豊島美術館のスタッフと一緒に毎日作業してます。
正直、僕も若くはないし体力的にはしんどいですよ。夏の草刈りとかほんま地獄です(笑)。でも、仕事に対しての精神的なストレスは全く無いですね。楽しい!という気持ちの方が勝ってます。職種も環境も全然前職と違いますけど、担当課のバックアップもしっかりしていて、有り難い環境でノビノビと仕事をさせてもらっています。
ただ、せっかくこの場所で一から農業をやるんだから、米や野菜という従来発想からの作物だけではなく、未来を見据えていろいろチャレンジしていかないといけない。その一つが「綿」!棚田で綿を育ててるなんて、日本でもここだけじゃないかなと思います。
あとは棚田のロケーションも最高なので、観光客がふらっと散歩出来るように通路を整備したり。そんな風にここの棚田とか農業を通して、豊島全体のPRが出来ればいいなと思っています。

豊島での生活って?!

お隣の小豆島は商業施設もたくさんあるので、都市部とそう変わらないですが、豊島は「ザ・島ぐらし」ができます(笑)。
島内にも商店はあるので、最低限の食料品や日用品の購入はできます。あとは火曜日が休島日(島内のお店の定休日)なので、個人の方はまとめ買いをされたり、お店をされている方は仕入れも兼ねて朝一のフェリーで出発して昼ぐらいに買い物を背負って島に戻ってきたりしていますね。
また、島内はスマートフォンでのデータ通信もストレス無くできますし、インターネット環境(光回線)を引くこともできますので、パソコンやスマートフォンからのネット購入もよく利用しています。大手配送業者は離島料金もかからず、大体翌日には届くので、その点は小豆島とも変わらず、不便だと感じることはあまり無いですね。

大きく変わる点は、医療だと思います。病院は島内に診療所が一つありますが、緊急対応はできないです。大きい検査や治療が必要なときは小豆島か宇野、高松へ行き、緊急時は発生時間帯によって渡航手段は異なりますが、高松へ行くことが多いと思います。眼科や歯医者等の専門病院もありませんので、それも島外に行かないと診療・治療ができません。
学校は保育園、小学校、中学校まであります。小中学校は全生徒30人弱といったところでしょうか。高校は、ほとんどが小豆島中央高校(小豆島 蒲生)に進学し、高校寮に入るようです。

高校卒業後、そのまま就職や進学で島外に出る子がほぼ100%ということや、著しい高齢化も重なり、人口減少に歯止めがかかりません。それにより、農業・漁業等の島の産業や、観光に関わる仕事、自営業の方の担い手不足が深刻化し、全体が衰退化していくであろうという、島の将来に対しての心配はいつも考えますし、その不安が尽きることがありません。
しかし、憂うばかりではなく、現実を踏まえながらも島の未来がより良くなるように考え、行動していくことが、僕の使命ではないかと思っています。

プロフィール
新屋 貴之(しんや たかゆき)
1975年、大阪府生まれ。妻・娘の3人家族。
土庄町地域おこし協力隊として、2019年5月より両親が住む豊島に単身移住。
趣味は読書。
豊島での暮らしを毎日ブログで発信中

豊島の地域おこし協力隊日記」
https://ameblo.jp/teshimaokoshi/

インタビュー取材・文担当。小豆島出身、進学のため島を離れ、大学卒業後東京で約10年アパレル関係会社で勤務。2017年に小豆島へUターン。現在はpizza kamosでの店舗プロデュースをメインにプランナーとして活動中。

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